来 歴


優しい記憶


熔けてゆく雪の下には
目を閉じて
じっと身をひそめている
アネモネやその他の球根

うずだかい落葉の下には
体をまるめて
そっと息を凝らしている
さまざまな大きさの幼虫たち

口ごもることばの裏側には
手足を縮めて
鼓動を抱きしめている
やわらかな胎児のわたし

みんなが
そうやって出発して来たのに
まちがいなく
共有の場所に生きているのに
かぐわしい世界から
少しずつ透きとおって生き始めた記憶
そこはただの暗やみではないのに・・・・・・
悪い色で塗りつぶしてはいけないのに・・・・・・

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